介護者ファースト


~薬局でありそうな風景について架空の会話形式で説明しています~






認知症のお父さんの付き添いで通院しておられる 地阿 布里土(ちあふりど)
さんは、認知症は本来、何科を受診させたら良いのか、悩んでいるそうです
確かに認知症の診療に当たるのは、内科医でもなさいますし、神経科、精神科、
脳神経外科、物忘れ外来、老年病内科、等多岐に亘っていますね

「オヤジは、足腰も弱って通院も難しくなって来たので、ケアマネさんから  かおまる
自宅まで診察に来てくれる医師に切り替える様に、勧められているんですが」
お父さんの様に90代半ばともなられると、訪問診療になさる方も多いですね

「オヤジは高血圧の薬ものんでいるし、内科医に訪問診療をお願いする事に  かおまる
なると思うんですが、認知症の事もちゃんと診て頂けるのか心配で」
訪問診療でも、癌の終末緩和医療ですと、医師に専門知識が有るのが当然ですが
超高齢化社会を反映して、最近では高齢故の訪問診療も、専門性が高まっています
中には、日本在宅医学会の研修会に参加している、熱血診療医もいらっしゃいますよ

「内科とか外科とかではなく、訪問診療科と言う科を極めた医師という事ですね」  かおまる
高齢者特有の、誤嚥、褥瘡、経管栄養、在宅酸素等の知識が豊富な医師が多いです

「では、訪問診療医は、認知症にも詳しいのでしょうか」   かおまる
認知症に関しても、現実のご自宅での患者さんの様子や、家族の関係性等を目撃する
機会もあり、寧ろ、通院だけでは分からない問題点を発見して頂ける場合もあります

「オヤジは、高血圧で内科に通院していて、数年前、物忘れがひどくなったと訴えたら  うへー 
認知症の基本の薬を処方されて、ドネペジルと言う薬をのみ始めたんです」
ドネペジルは、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬というアルツハイマー治療薬です
アルツハイマー型認知症は、脳の記憶や思考に関わるアセチルコリン(ACh)による
神経伝達の働きが低下する事が原因で、記憶力、判断力、思考力が悪化して行きます
ドネペジルは、AChを分解するAChエステラーゼと言う酵素を阻害する事で
脳内のAChを増やし、アルツハイマーが進行するのを食い止める働きがあります

「ですが、ドネペジルを開始して怒りっぽくなり、逆に手に負えなくなりました」  冷汗2
AChの伝達を高めると興奮性が高まるので、怒り易くなったり、暴力的になったり
徘徊したりと、皮肉な事に、介護者を困らせてしまう行動が増える場合があります

「そこで、やはり認知症の専門医を受診するべきだと思い、精神科に転医した所 かおまる
ドネペジルが合わない人も居ると言われ、チアプリドと言う薬に変えられました」
チアプリドは、ベンザミド系抗精神病薬と呼ばれ、脳内の興奮系神経伝達物質の
ドパミン受容体をブロックして、幻覚、幻聴、妄想等の症状を抑えるお薬
です

「チアプリドって精神病の薬だったんですか!」  驚き1
一般的に抗精神病薬の様なドパミンを抑えるお薬では、長期服用すると、薬剤性
パーキンソニズム
と言って、パーキンソン病に似た症状が、出る事が有ります

「パーキンソン病は、ドパミンの働きが落ちてなる病気ですものね」   かおまる 
チアプリドは精神病薬の仲間ですが、鎮静作用が弱過ぎるので、薬剤性
パーキンソニズムを起こさず、寧ろその症状のジスキネジアに処方されます

「チアプリドは、精神病薬としては弱い部類の薬なんですね」  かおまる
ジスキネジアは、ドパミン長期間抑制により、ドパミン受容体が過敏になり
僅かなドパミンでも反応する様になる、ドパミン系異常が原因だとされています
が、チアプリドも弱いとはいえドパミンを抑制するので、ジスキネジア改善
効果は一時的で、長期服用するとジスキネジアが悪化
してしまいます

「神経をブロックすると、逆にその神経が過敏に反応する様になるんですね」  汗5  
そこで最近は専ら、脳梗塞後の攻撃的行為や徘徊に処方されるお薬になっており
さらに、脳梗塞に限らず、認知症等の興奮状態にも効果が認められています

「医師は、もっと怒り易くなったら、チアプリドじゃ力不足だと言ってました」 冷汗4
チアプリドの最大のデメリットは、鎮静作用の弱さなのですが、それ故穏やかに
効き、即効性がある一方で、作用時間は短くて、体に蓄積せず

眠気やふらつき等の副作用も少なく、ご高齢の方には安心なお薬です

「チアプリドで何とかなっているオヤジは、まだ症状が軽いのかな」  かおまる 
認知症の症状は患者さんにより違い、全般に共通する記憶障害を中核症状
幻覚、妄想、不眠、抑うつ、無関心等個人差の出る症状を周辺症状と呼び
周辺症状はさらに興奮性の陽性症状と、気分が落ち込む陰性症状に分かれます

「医師は、認知症で家族が本当に困るのは、陽性症状だと言っていました」   かおまる
患者さんも介護者も両方救うのがベストですが、どちらかしか救えない場合は
止むを得ず、介護者ファーストの治療を選択せざるを得ません

「認知症老人からしても、家族に介護疲れで見放されたら、終わりですからね」   かおまる
中核症状治療薬は、ドネペジルの様にACh伝達系を強める作用のお薬ですが
その系統のお薬は、陽性症状を悪化させて介護を困難にしてしまう事が有ります
その為、チアプリドの様な陽性症状治療薬の方が良い場合もあるのです

「オヤジは家具やドアに当たり散らす事も無くなり、穏やかになりましたが   泣き1
テレビにかじりついて観ていた大相撲に、興味を示さなくなってしまいました」
認知症で無気力になってしまう原因として、うつかアパシーが考えられますが
アパシーでは希死念慮が無いと言われ、治療薬が微妙に違うので鑑別が重要です

「うつだったら、うつ病の薬が効きますよね」  かおまる 
アパシーの薬物治療については、まだ十分な研究がされていないそうですが
脳梗塞後アパシーには、アマンタジン等のドパミンを刺激するパーキンソン薬が
効くそうで、ドパミン経路の活性化が有効なのではないかと言われています

「チアプリドでドパミン過敏になってるかも知れないのに、活性化するのは恐いな」  冷汗1
アルツハイマーのアパシーには、AChエステラーゼ阻害剤が効くそうです

「やっぱりその手の薬になりますか、それだと又興奮状態に逆戻りしそうだな」   かおまる 
中核症状治療薬はドネペジル以外にも数種類あり、それぞれ特徴があります
レミニールというお薬は、ドパミン刺激効果も少しあり、アパシーの人向きですし
他にリバスタッチパッチという貼り薬もあり、それですと、効き過ぎたり
副作用が出たりした場合は、剥がせば直ちに効果が中断出来るので安全です

「基本的治療薬の選択肢は、ドネペジル以外にも色々あるんですね」   かおまる
うつ病薬はセロトニンを増やしますが、ドパミンも若干増やすものがあり
それだとうつにもアパシーにも有効ですが、いずれにせよ周辺症状治療は
有望な薬を試して効果を判定し、よりよい治療薬を探し当てるしか無いのです

「精神科医も、認知症の薬はのんでみないと分からない、と言っています」  かおまる
認知症進展予防には、多剤併用(ポリファーマシー)を見直す事も重要
短期の服用なら良くても、長期連用すると認知症が悪化するお薬があるのです

「睡眠薬や安定剤は、ボケ易くなると聞いたので、即刻止めさました」  かおまる 
そういったベンゾジアゼピン系薬以外にも、抗コリン作用、つまりAChを
抑える作用
を持つ物は、普段何気なく処方されているお薬の中にも多いのです

「つまり、ドネペジルの様な認知症の基本的治療薬に逆行する薬って事ですね」  かおまる
例えば、頻尿治療薬や、鼻水や痒みを止める抗ヒスタミン薬等が該当します
これらの抗コリン剤は海馬の活動を低下させる為、若者が服用しても一時的に
認知機能が低下しますが、高齢者では、薬物を代謝する能力や、血液脳関門
という脳の関所の機能が弱くなっているので脳への薬物流入率も高くなります

「オヤジも以前頻尿で、ポラキスという薬をのんで居ました」  かおまる
頻尿治療薬でもポラキスは、脂溶性が高いので血液脳関門を通過し易い為
認知機能低下リスクが高いのですが、プロピベリンというお薬でしたら
ドネペジルと併用しても、双方共効果を減弱しなかったというデータが有ります

「オヤジは、今じゃ紙パンツにしているので、頻尿の薬はもうのんでいませんが   かおまる
皮膚が乾燥して痒がるので、クロルフェニラミンと言う痒み止めをのんでいます」
クロルフェニラミンは、第一世代抗ヒスタミン剤に属する古いお薬で安価ですが
血液脳関門を通過し易く、抗コリン作用も強く、高齢者には不向きな鎮痒剤です
脳内移行率の少ない抗アレルギー剤に変更して頂くか、老人性乾皮症でしたら
保湿剤による外用療法を強化すれば、内服はしなくても済むかも知れません

「認知症以外でのんでいる薬にも、気を配らないといけないんですね」  スマイル2
ご高齢になると、沢山のお薬を併用する様になりがちですが、時々は見直して
不用な薬は減らす努力をして頂いた方が良いですね






(参考)
コウノメソッド2016  (←相変わらず、戦闘的な文章です)
『脳卒中後アパシーと血管性認知症』 小林 祥奏
『リハビリテーション医療におけるアパシーとその対策』 蜂須賀 研二
『BPSDの薬物治療』 水上 勝義
『認知症高齢者と薬剤師』 寺田 智祐        他








仕事と私事で忙しかったので多肉の世話が出来ずにいます
春めいて来て、花芽も上がって来ています

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 結婚式で両親が頂ける花束が、私だけ多肉の寄せ植えでした

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フロル

Author:フロル
調剤薬局で働く
薬剤師です

興味のあることは
(昔)パッチワーク
   お菓子作り
   ベランダ・ガーデニング
(現在)糖尿病
    手料理
    パン屋さん

 2014年~ 多肉植物
 在宅を細々始めました

自分の勉強の為にブログを書いています

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