よりを戻したくなる薬

~薬局でありそうな風景について架空の会話形式で説明しています~







紅路 品(べにじひん)さんは、高血糖の時だけ血糖を下げるホルモンのGLP­1を
長生きさせるDPPⅣ阻害剤という系統の糖尿病治療薬を服用していらっしゃいます

「昔からある糖尿病の薬と違って、この系統の薬だと低血糖の心配が無いから良いね」   えへ5
DPPⅣ阻害剤は、2009年末に初めて発売された新しいタイプの糖尿病薬です

「しかも、僕がのんで居るトラゼンタは、その中でも肝臓や腎臓に負担が少ないしね」  スマイル2
他のDPPⅣ阻害剤は腎臓から排泄されますが、トラゼンタだけは、肝臓で殆ど代謝
されず、胆汁中に排泄される為、肝機能や腎機能が低下していても安心して使えます

「それどころか、トラゼンタは腎臓の機能を改善する効果まであると聞いたよ」  かおまる 
トラゼンタは腎機能の二大指標である、尿中アルブミンと糸球体濾過量(eGFR)
を改善させる事が分かっており、これはDPPⅣ阻害剤によって増えるGLP­1の
作用では説明出来無いので、他のDPPⅣ阻害剤では見られない効果なのだそうです

「低血糖を起こさない優れた糖尿病治療薬の中でも、さらにピカイチの薬なんだね」  かおまる
トラゼンタの腎保護作用のメカニズムは解明されていませんが、他のDPPⅣ阻害剤は
DPPⅧやDPPⅨに対しても若干阻害作用があるのに対し、トラゼンタはDPPⅣ
だけを選択的に阻害し、又阻害効率も非常に高いので、その辺りに原因がある様です
トラゼンタは、糖尿病を悪化させる終末糖化産物のシグナルも抑制するそうです

「ここ数年、血清クレアチニンが高めになっているので、腎臓に良いとは有難いね」   汗1
血清クレアチニンは腎機能が低下していると高くなりますが、筋肉量が多い程数値が
上がるので基準値には性差があり、若年層や男性の方が高めの設定にされています
年齢別や性別に、血清クレアチニンを計算式に当て嵌めて計算したものがeGFRです

「蛋白尿が出てからじゃ遅過ぎるから、微量アルブミン尿も測って貰っている」  汗5  
腎症初期には小さい蛋白質のアルブミンが尿中に溢れ出すようになり、さらに悪化して
蛋白尿になりますので、早期発見には微量アルブミン尿検査の方が適しています

「微量アルブミン尿は出た事無いけど、eGFRが60を切っているのが心配だ」  かおまる
腎症の二つの指標には乖離が生じる場合があり、正常アルブミン尿でeGFRが低い人
もあれば、逆に、eGFRは60以上だけど顕性蛋白尿のある人があり、前者の方が
後者よりも、悪化するスピードが遅く
、末期腎不全や心臓病にもなり難いそうです

「先生も、僕の腎症は進行が遅いタイプだから心配しなくていいと言っていたけど」  かおまる
eGFRが低くても、微量アルブミン尿が無い人は、糖尿病腎症と言うより、高血圧
が長年続いた事による、動脈硬化に伴う腎硬化性腎症
ではないかと言われています

「そう言われてみれば、高血圧の薬は、糖尿病になる何年も前からのんで居たなぁ」  えへ3
薬歴を遡ると、二十五年前は、降圧剤しかのんでおられなかった様ですね

「コニール2mgなんて弱い降圧剤で効いていた時代もあったのか、懐かしいな」  かおまる
年齢と共に段々と、降圧剤が増えて行っているのが、薬歴を見ると分かりますね

「コニールを4mgのんでも150代が続く様になり、ノルバスクに切り替えた」  うへー 
コニールもノルバスクもカルシウム(Ca)拮抗薬と呼ばれる系統のお薬で
血管平滑筋のCaイオンの通り道であるCaチャネルを塞いで、血管収縮を抑え
血管を拡げて血圧を下げますので、直接血管に働く為降圧効果が確実です

「ノルバスクの方が、コニールよりも、よく血圧が下がった」  スマイル 
薬の有効成分の最高血液中濃度が半分に減る時間を半減期と言い、これが長い程
効力持続が長い事を示していますが、コニールの半減期は1~2時間と短い
のに対し、ノルバスクは35時間と非常に長く、長く穏やかに効くのも利点です
Ca拮抗薬は降圧作用が強い分、急激に血圧を下げ、反動で心拍数が増えて頻脈
となり、却って心臓に負担がかかってしまう
、と言うのが唯一の欠点ですからね

「ノルバスクは、よく効く降圧薬で、更に副作用も少ないんだね」  かおまる
今はジェネリックに変更して、アムロジピン5mを服用していらっしゃいますが
先発品を含めたアムロジピン全般が、現在一番使われている降圧剤だと思います

「僕も世間並にアムロジピンがあっていて、それ以来ずっと血圧は安定している」  かおまる
でも、糖尿病発症してから、腎機能を考慮して、別系統の降圧剤も追加されました

「アムロジピンは降圧剤としては優れているけど、腎臓には良くないそうだからね」  かおまる
血液は腎臓の入り口である輸入細動脈から糸球体に入り、糸球体で濾過された後で
輸出細動脈から出て行きますが、腎臓内部の糸球体内圧が高くなると、腎症が悪化します
糖尿病性や腎硬化性の腎症では、輸入細動脈が自動調節能の破綻によって拡張する一方で
輸出細動脈は拡張しないので、糸球体内圧が上がり、蛋白も一緒に濾過されてしまいます

「それで、尿に蛋白が下りるようになるんだね」  冷汗4
アムロジピンは輸入細動脈しか拡げられないので、糸球体内圧が上がってしまいます
糸球体内圧を下げるには、輸出細動脈を狭めているアンジオテンシンⅡというホルモン
を抑えるレニン-アンジオテンシン­アルドステロン(RAA)系降圧薬
が最適です

「だから今は、RAA系を抑えるロサルタンという降圧薬も併せてのんでいるよ」   かおまる
輸出細動脈には、アンジオテンシンⅡの受容体が非常に多く、ロサルタンは全身的な
降圧作用は弱いものの
、糸球体内降圧には優れ、蛋白尿を減らす効果があります

「加えて今回は、Ca拮抗薬も腎臓に良いタイプの薬に変えると言われた」  かおまる 
今日はアムロジピンに変わり、ベニジピン8mgと言う降圧剤が処方されています

「新たに、腎臓に良いCa拮抗薬が発売されたんだね」  かおまる
ベニジピンは、紅路さんが以前のんでいらしたコニールのジェネリックですよ

「ええっ? でも僕はもうコニールでは血圧が下がらないと思うが、大丈夫かな?」  驚き1
以前のんでいらしたのはコニール4mgですから、倍量になっています
アムロジピンはL型Caチャネルにしか作用しませんが、コニールことベニジピンは
L型と共に、N型とT型のCaチャネルにも作用
します

「同じCa拮抗薬と言っても、DPPⅣ阻害剤みたいにそれぞれ特性が違うんだね」  かおまる 
輸出細動脈にはL型は存在せず、N型とT型のCaチャネルだけが分布しています
なので、L型Caチャネルしか拮抗しないアムロジピンは、輸入細動脈のみ拡張して
輸出細動脈は拡張出来ず、糸球体内高血圧を助長して、腎症を進めてしまいます

「入れるだけ入れて出さなければ、中がパンパンになってしまうからね」  かおまる
輸出細動脈のN型とT型CaチャネルはアンジオテンシンⅡ受容体程多くはないので
RAA系抑制薬程の効果は望めませんが、L型とN型とT型のCaチャネルを阻害する
ベニジピンですと、輸出細動脈も拡張しますので
、糸球体高血圧を低下させるのです

「ベニジピンは、アムロジピンの様に長時間安定して効かないけど大丈夫かな?」  かおまる  
ベニジピンは半減期が非常に短いのですが、細胞膜への移行性が高くて、主として
細胞膜内を通って作用部位に結合すると言われており、更に作用部位への親和性も強く
解離速度も非常に遅い
ので、血中濃度が下がっても、作用は持続すると言われています

「アムロジピンへの信頼感が強い分、今更昔のイマイチだった薬に戻るのは不安だな」   汗  
腎症に良いCa拮抗薬を調べた臨床試験ABCスタディの結果が、2007年発表され
それによりますと、アムロジピンをベニジピンに切り替えた方が、血圧が下がり
尿蛋白も減ったそうで、しかも、糖尿病や腎症の人でその効果が強かったとの事です
この結果を踏まえ、降圧剤の理想的な組み合わせを調査したCOPE­Trial
という試験では、基本となるCa拮抗薬としてベニジピンが採用されています

「コニールは血圧が余り下がらないと思っていたが、腎臓の為には良い薬だったのか」  かおまる
ベニジピンは降圧能力とは関連しない部分で、尿蛋白減少効果が有ると言われています
T型Caチャネル阻害によるアルドステロン分泌抑制作用や血管拡張作用のある
一酸化窒素産生効果
もあり、Ca拮抗薬の中では腎症進展予防には一番良い薬です

「そこまで言うんなら、もう一度ベニジピンをのんでみるか  えへ4 
何か、昔別れた前妻とよりを戻したみたいな、奇妙な感覚だけどね」






(参考)
臨床応用科学 Vascular Streett  教育講演『腎障害を伴う高血圧の治療』
Prog.Med. 『2型糖尿病患者におけるリナグリプチン (トラゼンタ®)の腎保護効果の検討 』





10年以上昔、協和発酵キリンのMRさんは『コニール君』と呼ばれていました

それ位、薬局に来る度に「コニール、コニール」と連呼していました

糖尿病患者さんとウォークラリーに参加するのにもご一緒したりして
仲良くさせて頂いておりました

時を経て、現在の協和発酵キリンさんは「オングリザ」を連呼しています
今更、コニールの腎保護作用を謳っても、ジェネリックになってしまっています

昔は、コニールは降圧効果の面でノルバスクと競っておりまして
「ノルバスクだと血圧が下がり過ぎてしまう方に如何でしょうか?」

てな立ち位置でしたが、その当時から腎保護で勝負していたら
処方量は今と違っていたのではないかと思います

当時のMRさんの、困ったようなハ眉の表情を懐かしく思い出します






多肉が色づいて来て、紅葉の季節です

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普通、紅葉と言えばこういうのを言うんでしょうがね・・・

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タニラーとしては、これからの寒い季節は、多肉が紅葉するので
一番楽しい季節です

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主人が忘年会でお土産頂いてきたので、ついテンションが上がりました
が、もっと庶民的なチョコの方が、実は好きだったりします

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コメント
No title
突然の訪問、失礼いたします。
私はこちら⇒b--n.net
でブログをやっているさくらといいます。
色々なブログをみて勉強させていただいています。
もしよろしかったら相互リンクをお願いできないでしょうか?
「やってもいいよ」という方はコメントを返してくだされば、
私もリンクさせていただきます。
よろしくお願いします^^
2017/12/29(金) 20:35 | URL | さくら #-[ 編集]
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プロフィール

フロル

Author:フロル
調剤薬局で働く
薬剤師です

興味のあることは
(昔)パッチワーク
   お菓子作り
   ベランダ・ガーデニング
(現在)糖尿病
    手料理
    パン屋さん

 2014年~ 多肉植物
 在宅を細々始めました

自分の勉強の為にブログを書いています

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