当人も全く気づかない

 ~薬局でありそうな風景について架空の会話形式で説明しています~





食品工場で働き、定期的に検便をされている 武床 譲(むしょうじょう) さんは 
検便でサルモネラ菌が陽性との通告を受け、急遽医院を受診されました

「サルモネラが出たのは初めてですが、何で感染したのか見当もつきません」  冷汗1
サルモネラ菌は生卵や鶏刺し等で感染し、潜伏期間は凡そ12時間程度で、保菌期間は
平均で1カ月、長くとも3カ月程度で自然消滅するそうです

「納豆に入れた卵が古かったかな?  でも、ネットで調べたら、サルモネラ中毒  うへー 
の症状は下痢や腹痛や発熱と書いてあったんですが、そんな症状は一切無いんです」

サルモネラ菌は、感染しても症状が出ない不顕性感染となる場合があり、無症状でも
菌は出しますので、当人も全く自覚がないまま、感染源となってしまう恐れがあります
食品関係従事者が定期的に検便をするのは、この不顕性感染を見つけ出す為なのです

「検便で陽性が出ると、強制的に休職させられてしまうそうで、困りました」   泣き1 
陽性通告を受けると、抗生剤で除菌して、再検査で陰性判定を確認後職場復帰出来ます
一度の陰性判定では不可で、三回連続陰性で初めて復帰許可される企業もあります
今回は、レボフロキサシン500mgという抗生剤を、一日一回一週間服用して下さい

「先輩に聞いても、僕の様な目に遭ったことがある人が居なくて、相談も出来ません」  かおまる 
サルモネラ陽性が出るのは、3000人に一人という確率だそうですからね
でも、O157陽性と言われるよりはマシですよ、確率は数万人に一人とレアですが

「あの、感染力が強くて、死の恐れもあるO157にも不顕性感染があるんですか?」  驚き1 
不顕性感染となる食中毒菌には、サルモネラ菌、O157、ノロウイルス等があります
O157だと、ご本人からも保健所にも連絡することが望ましいと言われています

「O157の方がサルモネラなんかより、シャレになんないですもんね」  かおまる
不顕性感染で有名なのは、1900年代初頭アメリカに居た、メアリー・マローンという
女性で、サルモネラ菌の一種であるチフス菌を保菌していながら、料理上手だったせいで
富豪に調理人として雇われ、自覚がないまま、生涯で3人の死亡者を出してしまいました

「不顕性感染者が調理の仕事に就いていたら、そりゃ恐ろしいでしょうね」  冷汗2
彼女が勤めた家庭のほとんどで、彼女が雇われた直後に腸チフスが発生していたので
不審に思った衛生局の人が、彼女の検便をした所、チフス菌が検出されたそうですが
彼女自身はチフスの症状が全く無かったので納得がいかず、ほとぼりが冷めた頃今度は
病院の調理人に復帰して、そこでまたチフス感染を広げてしまい、その後は隔離病院で
生涯を終えたそうですが、ただの料理自慢の女性だったのに、何だか気の毒なお話です

「僕も、調理が好きで今の職業に就いたので、身につまされますね」  かおまる
当時は、チフス菌の様に毒性の高い細菌に感染しているにもかかわらず症状が出ない場合
もあるという
、不顕性感染という概念がまだ無く、彼女の症例をもってして初めて学会に
発表された位ですから、メアリーさんが納得いかなかったのも無理もないのです

「その人の200年後に生きている僕ですら、今日初めて聞いた説ですもんね」  かおまる
メアリーさんの死後、病理解剖した所、胆嚢にチフスの感染源があった事が判明しました
つまり、メアリーさんに初感染したチフス菌が弱かったのか、彼女の免疫力がそれに勝って
いたせいかで、症状の無い不顕性感染が成立し、その後生涯に亘り、胆嚢に住み着いた
チフス菌が胆汁中に混ざって腸に排出され続け、糞便中に出て感染源となった
様です

「僕が今日処方された様な抗生物質も、その頃には無かったんでしょうしね」  汗5 
ペニシリンの発見が1929年、メアリーさんが亡くなったのが1932年ですからね

「それにしても、メアリーさんは、幸か不幸か、抵抗力が強かったんですね」  かおまる
先日、世間を騒がせたO157ですら、とある給食による集団感染事例を分析した結果
によると、入院が必要となった児童が1割、下痢程度の軽症で済んだ児童が6割で
残りの3割の児童は全く症状が出なかった、というデータがあるそうです

「一歩間違えると死の危険もあるO157なのに無症状なんて、ある意味凄いですね」  かおまる
腸内には、病原性の無い無害で有益な大腸菌が生息し、腸内細菌叢を作っていて
この腸内フローラが、外部からの有害な細菌の侵入を防いでくれていますし、又
体内に備わった抗原抗体反応による免疫力にも、菌と戦って退散させる力があります

「サルモネラで食中毒にならなかった僕は、抵抗力が強いと喜ぶべきなのかな」  かおまる   
そうなのでしょうが、サルモネラでも非チフス性の場合は自然治癒の傾向が強く
食品取扱従事者の方以外ですと、そもそも抗生物質をのむ必要すら無いそうです
下痢や発熱等の症状が出た場合には、解熱剤や整腸剤をのんだり、脱水対策をしたり
と対症療法はしますが、止瀉薬は菌の排出を遅らせるので服用しない方が良いのです

「因みにO157にも、僕と同じ抗生物質が効くんですか?」   かおまる
O157の菌にも、レボフロキサシンの様なニューキノロン系と呼ばれる抗生物質や
その他の抗生物質でも効く事は分っていますが、投与しない方が良いとの説もあります

「抗生物質が効くのに、のんじゃいけないとは、どういうことなんですか?」  ブー1
というのは、O157は感染力が非常に強いのですが、恐いのはその感染力よりも
O157が放出するベロ毒素
で、これが溶血性尿毒症症候群や脳症を起こします
抗生物質を投与すると、ベロ毒素の放出を促進する危険性があると言われています

「抗生物質で攻撃されると、窮鼠猫を嚙む状態で、最終兵器を投入して来るんですね」  かおまる
O157を抗生物質で追い詰め過ぎると、かえってベロ毒素を出させてしまいますが
抗生物質を投与すれば、O157の増殖や周囲への感染は防げますので、現時点では
O157への抗菌薬治療の是非に対しては医学界の意見も統一されていない様です
下痢や発熱等の症状に関しては、サルモネラと同様の対症療法で良い様です

「人々から恐れられている菌でも、症状が出ない様な抵抗力の強い人もいるって事  スマイル
個人差が大きいんだという事が、とても勉強になりました」
不顕性感染の人は、確かに強運なのですが、自分が感染源になり菌を拡散させて
しまう危険性を考えると、幸運とばかりも言えない面もあります

「万一僕が菌をばらまいたら、食品業界の恥だから、検便は社会的責務ですね」  かおまる 








(参考)
ウィキペディアの『メアリー・マローン』のページ (←今回寄付しました)
検査会社のHP



食品関係従事者が、非チフス性のサルモネラ菌で陽性が出た場合は
ニューキノロン系薬を7日間服用し、10~14日後の検便で、
2回連続して陰性であれば、菌がなくなったと判定して就業許可がおりるそうです
つまり、最短で3週間で仕事復帰できるそうです

一方、メアリー・マローンさんと同じチフス性のサルモネラで陽性が出た場合は
非常に重篤な全身症状を起こす腸チフスの感染源となる恐れがあるので
ニューキノロン、又はアモキシシリン、又はST合剤4~6週間治療して
完全除菌しないといけないそうです

又、メアリーさんの様に、腸チフス菌が腸管以外に胆囊内にも保菌されていることも多く
胆石を持っている方や、慢性胆囊炎を合併している方は、先に外科的に手術して
胆囊を取ってから
、 さらに2週間抗菌薬を投与することが原則となっているそうです

してみると、メアリーさんは、たとえ現代に生きていたとしても、中々ハードな治療を
受けないと、現場復帰は難しい状況
にあった、という事ですね








9月、長野方面に旅行してきました。

国宝の八角堂を見たり、長い階段を登ったり、

旅行9-2  旅行9-3
 

不思議なタイムスリップ感覚になる、大正時代に建てられたホテルに泊まったり

今はさびれたけど、どこか惹かれる、真田幸村所縁の神社に行ったり

 旅行9-4  旅行9-1

そして、多肉の聖地の生産者さんにも行けて、大満足でした。

 旅行9-6  旅行9-5



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フロル

Author:フロル
調剤薬局で働く
薬剤師です

興味のあることは
(昔)パッチワーク
   お菓子作り
   ベランダ・ガーデニング
(現在)糖尿病
    手料理
    パン屋さん

 2014年~ 多肉植物
 在宅を細々始めました

自分の勉強の為にブログを書いています

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