“野球部なのに陸上部並みの俊足“ みたいな痛み止め

~薬局でありそうな風景について架空の会話形式で説明しています~





木瓜 梨々花(ぼけりりか) さんは長年腰痛に悩まされてきました

「六十代の頃は、腰が痛くなっても、痛み止めのロキソニンかセレコックスをのみ  かおまる  
腰痛ベルトを着け、腰痛体操をしたりしているうちに、よくなったんですけどね」

痛みには、痛みを感じる侵害受容器が刺激されて急性に起きる、侵害受容性の痛みと
痛みを伝える神経が障害されて慢性的に起きる神経障害性の痛み、又、神経障害性等
で疼痛が慢性的に継続すると精神的に痛みを感じる様になる心因性疼痛とがあります

「確かに、痛みが長引くと精神的にも参ってしまいますよね」  汗  
ロキソニン等の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)が効くのは、侵害受容性の
痛みで、腰痛も慢性化すると、複合的に神経障害性も原因の一つとなるそうです

「慢性腰痛と診断されてから、リリカという、神経痛に効く薬をのみ始めました」 かおまる  
リリカは、NSAIDSとは違い、神経障害性疼痛に効果のある鎮痛剤で
カルシウム(Ca2+)チャネルα2δ(アルファ2デルタ)リガンドと呼ばれます
神経痛は、神経が過剰に興奮して様々な痛み物質が放出される事によって生じますが
これは、神経細胞のCa2+チャネルからCa2+が流入する事で起きています
リリカはCaチャネルの補助的な役割を担うα2δサブユニットと結合してCa2+
流入を減らし、グルタミン酸等の疼痛物質の放出を抑え、神経痛を和らげます

「少量からスタートするお薬だと言われて、最初は25mgからのみはじめました」 かおまる
リリカは眠気やめまい等の脳症状、物が二重に見えたりかすんで見えたりする眼症状
他にも浮腫みや体重増加等の副作用が心配なので、少量から徐々に増量して行きます

「痛みは楽になり、特に副作用も無かったので、徐々に増やして行きました」  スマイル  
最大量の一日300mg迄、目一杯のんでおられる時期もありましたね

「リリカをのんでいると、気分的にも楽になるのでとても気に入っていました」  えへ4  
リリカは元々、脳内の抑制系伝達物質のGABAの誘導体として開発されたお薬です

「安定剤のデパスが作用するというGABA受容体の、あのGABAの事ですか?」 かおまる  
安定剤や睡眠剤や癲癇薬として使われるベンゾジアゼピン(BZ)系のお薬は、脳内の
GABA受容体に存在するBZ結合部位に結合して働きますので、BZ系薬の様な
効果を狙って開発されたのがGABA誘導体でした、しかし残念ながら
GABA誘導体はGABA受容体にもBZ結合部位にも結合しないと判明したのです

「GABAのそっくりさんなのに、GABAの受容体にはくっつかないのね」 かおまる
けれど、リリカはGABAの量を増やす効果があり、鎮静・鎮痛効果が認められました

「GABAを増やせるって事は、デパスみたいな精神安定効果もあるんですね」  えへ3
それでリリカは、神経障害性以外にも、心因性疼痛にも効果が期待出来るお薬なのです

「リリカをやめる時、以前デパスをやめた時に似た、辛さを感じたのはそのせいかな」 かおまる
そう言えば木瓜さんは、急に物忘れがひどくなったので、リリカをやめたんでしたね
リリカは『リリカぼけ』と言って、認知機能低下を起こしてしまう場合があるそうです
又、BZ系類似効果の故なのか、依存性や乱用の恐れもあると言われています
しかし、最大限の300mgのんでいて服用中止する場合は、急激に止めると、不眠、悪心
頭痛、不安、多汗等の離脱症状が出る事があるので、徐々に減量した方が良いのです

「次は、麻薬の様な作用の、トラマールというお薬に変わりました」  かおまる 
トラマールは、モルヒネと同じオピオイドμ受容体に作用して痛みを抑える鎮痛薬で
NSAIDSやリリカ等の非オピオイド系鎮痛薬を使っても効果が不十分な場合に用います

「癌の鎮痛薬だけど、安全性が高いので普通の痛みに使える様になったんですよね」かおまる  
当初の適応症は癌性疼痛に限られていましたが、効力がモルヒネの約1/5で、依存性も
生じず、副作用もモルヒネ程ひどく無いので、慢性疼痛に対する適応が認められました

「急性の痛みにも慢性の痛みにも、両方効くんですってね」  スマイル2  
オピオイド作用により侵害受容性に効き、ノルアドレナリンやセロトニンの再取り込み
阻害作用もあるので
下行性疼痛抑制系を活性化して、神経障害性にも有効です

「痛いの分かったから、これ以上伝えてこなくて良いよ、という神経経路の事ね」 かおまる  
『痛い』と言う感覚は、一次ニューロンから二次ニューロンを経て脳幹へ伝わりますが
逆に、脳幹から脊髄に向かって下行する抑制経路があり、これは一次と二次ニューロン間の
脊髄後角シナプスで、ノルアドレナリンやセロトニンという物質を放出して伝達を抑制し
末梢からの痛み情報が二次ニューロンに伝わらないようにする、痛み緩和経路なのです

「トラマールは痛みにはよく効いたんですが、副作用の便秘に悩まされました」 泣き1
便秘や吐き気や眠気等の麻薬特有の副作用も、モルヒネよりはトラマールの方が軽いとは
言う物の、便秘は頻度が高く、長引く事も多いので、下剤を併用して対処します

「でも、便秘薬が段々効かなくなって来たので、又々お薬を変える事になりました」 かおまる  
便秘薬でも大腸刺激性ですと、連用により体が薬に慣れて効かなくなる事があります
トラマールを長期服用後に急に中止すると吐き気や嘔吐、頭痛、不安感、震えなどの
離脱症状が出てしまう恐れがありますので、やめる場合は徐々に減量する必要があります

「次はうつ病にも効く、サインバルタというお薬に変わりました」  かおまる 
セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)と呼ばれるサインバルタ
神経伝達物質のセロトニンやノルアドレナリンの再取り込みを抑えて、ニューロン間に
長く留まる様にして
、神経伝達物質の作用を増強して、うつ病を治すお薬です

「うつ病って、脳のセロトニンが減る事でなると言いますものね」  かおまる
先程も言いました様に、セロトニンやノルアドレナリンを増やすと、下行性疼痛抑制神経
を活性化
しますので、SNRIは慢性的な神経障害性疼痛にも効くののです

「たかが腰痛の為にうつ病の薬をのむなんて、最初は抵抗ありましたけどね」 汗5 
サインバルタは、古い型のうつ病薬の吐き気や口の乾きや便秘等の副作用を軽減するよう
改良された、新しい型のうつ病薬なのですが、脳内の伝達物質を増やす関係上
のみ始めは少量から始め、止める時も徐々に減らしていかなくてはならないお薬です

「トラマールに変えた時吐き気が辛かったので、この時はごく少量から始めて頂きました」
サインバルタは、20mgのカプセルを脱カプセルして半分量の10mgから始めましたね

「腸で溶けるように工夫されたお薬なので、カプセルの内容物を砕いたり潰したり  かおまる  
しないようにと言われて、噛まない様に気を付けながら、水でのみ込んでいました」

吐き気が出ないまま40mg迄増やせましたのに、今回又別の鎮痛剤が出ていますね

「今回サインバルタを20mgに減らして、又別の抗うつ薬をのむ事になりました」 汗1  
三環系抗うつ薬の、トリプタノール10mgというのが加わっていますね
これは古い型のうつ病薬なので、副作用リスクはサインバルタよりも高いのですが
鎮痛効果が高いので、慢性疼痛には、うつ病の用量よりも少ない量で効きます

「先生は、今度のお薬はリリカの様に物忘れがひどくなる心配もあるけれど  かおまる   
キレの良い薬だから、一部サインバルタを置き換えてみると言われました」

抗コリン作用が強い三環系抗うつ薬は、認知機能低下の恐れがありますが
トリプタノールは、セロトニンやノルアドレナリンの再取り込み阻害に加え
NaやCaチャネル阻害作用、グルタミン酸のNMDA受容体阻害作用
多彩な作用機序を併せ持ち、鎮痛剤の効力を表すNNTは、リリカや
サインバルタやトラマールよりも優れ、麻薬並みだと言われています

「うつ病薬なのに麻薬並みに痛みに効くって事は『野球部なのに陸上部並み えへ5 
の俊足』みたいな感じかしら~それに、古いお薬だからコスパも良いそうですね」

確かに、サインバルタ20mgが173.5円、リリカ150mgが155.0円
トラマール25mgが38.6円なのに、トリプタノール10mgは9.6円ですね

「今回のお薬も増やすのも減らすのも少しずつで、勝手に止めてはいけないんですね」  かおまる
慢性腰痛のお薬はそういう宿命の様ですね








当薬局では、リリカカプセルについて
めまいが我慢出来ずに24時間以内に離脱した方が一例
自己判断で倍量のんで『リリカの前借り』をしていた方が一例
服用開始後、数カ月で認知症薬をのむようになった方が一例
(お三方とも、そこそこの高齢者でいらっしゃいます)
という事で、在庫管理の悩ましい薬となっております



日本緩和医療学会のがん疼痛の薬物療法に関するガイドラインによると

鎮痛剤の効力を表すNNT(Number Needed to Treat)
何人に1人の割合で疼痛が半減する患者が得られるか、という数値で
NNT=5であれば、5人に1人の割合で疼痛が半減するという事

逆に、NNH(Number Needed to Harm)
何人に1人の割合で、副作用が生じるか、という数値で
従って、NNTが低く、NNHが高い薬剤が優秀という事になります

そのサイトのデータによると、三環系(アミトリプチリン)で3.1
SNRIで5.5、ガバペンチンで4.7、オピオイドが2.5
カルバマゼピン、バルプロ酸、フェニトインも2.0代ですね
(プレガバリン、トラマドールは発売前?で、データなし)

別の精神科医のブログでは
NNTは、TCA(アミトリプチリン)で2.1、SNRIで5.0
プレガバリンで4.5、トラマドールで4.9、オピオイドで2.6

NNHは、TCA(三環系)で15.9、SNRIで13.1
プレガバリンで10.6、トラマドールで13.3、オピオイドで17.1

又、最近のメタアナリシスのNNTをまとめた別の医師のブログでは
三環系(アミトリプチリン)で3.6、SNRI(デュロキセチン)で6.4
プレガバリンで7.7、トラマドール4.7、強オピオイドで4.3

これらは複数の報告のレビューであり、各薬剤を同一条件でガチンコ対決
させた訳ではないそうですので、あくまで参考値です
そもそも、痛みそのものが、主観的なもので、血圧の様に測れるものでは
ありません
からね~





とうとう、と言うべきか、多肉植物の実生・交配まで始めてしまいました

花の雄しべの花粉を、下の様な超微細ピンセットを使い
人工的に、雌しべにくっつけるのです
 実生7

種が出来た花    白いコップに種の出来た花を回収します
 実生1  実生3

コーヒーの粉の様にも見えますが、れっきとした多肉植物の種です
 実生2  実生5

しかしこんなに沢山の種を蒔いて、世話はみられるのだろうか?
 実生6

作業してみて、やはり薬剤師と言うのは有利に働いたと思います
実験慣れしていますからね~
薬用植物学を懐かしく思い出しました



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プロフィール

フロル

Author:フロル
調剤薬局で働く
薬剤師です

興味のあることは
(昔)パッチワーク
   お菓子作り
   ベランダ・ガーデニング
(現在)糖尿病
    手料理
    パン屋さん

 2014年~ 多肉植物
 在宅を細々始めました

自分の勉強の為にブログを書いています

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