家族から血友病扱いされる男

~薬局でありそうな風景について架空の会話形式で説明しています~





整形外科と循環器科の処方箋を持っていらした 桑原 朱津傑(クワバラしゅっけつ)
さんですが、今回整形の方は湿布剤だけで、内服薬は出ていませんが大丈夫ですか?

「痛み止めのんでも治る訳じゃないから、痛い時だけのむようにしてって言われたんだ」  かおまる  
確かに、鎮痛薬は根本治療薬では無く、あくまで対症療法薬で、胃にも障り易いですし
リウマチ等の強度の炎症性疾患でもない限りは、漫然とのみ続けない方が賢明です

「リウマチとかの大それた病気じゃなくて、ただの腰痛持ちなのさ~」  かおまる
循環器の処方箋は先月と同じ、アダラートCR、メインテート、コバシル、リバロ
ワーファリン、プラビックス、バイアスピリンで、ワーファリンは今回も2錠ですね

「僕は長嶋さんやオシム監督と同じ不整脈なので、ワーファリンとは縁が切れないんだ」  かおまる
心房細動80歳以上の1割にみられる不整脈で、これがあると左心房に血栓が出来易く
それがはがれて脳に飛んで大きな血管を閉塞するのが心原性脳塞栓症で、突然大きな血管が
詰まるのでアテロームやラクナ等の他のタイプの脳梗塞に比べ、重篤化し易く、致死率も高く
心房細動がある人はない人に比べ、5倍も脳梗塞を起こす確率が高いと言われています

「寝たきりにはなりたくないので、血液を固まり難くする薬はしっかりのまなくちゃな」  かおまる  
永続性心房細動になると、血液凝固を止めるワーファリンを継続してのむ必要があります

「血液を固まり難くする薬でも、最近は納豆を食べても大丈夫な薬もあるらしいけどね」  かおまる
ワーファリンは血液凝固に関わるビタミンKを抑えて凝固を止めますが、ここ数年
ビタミンKとは別の部分に作用して凝固を止める非ビタミンK拮抗抗凝固薬(NOAC)
と呼ばれるお薬が次々に発売され、それですとビタミンKを多く含む納豆も食べられます

「でも僕にはワーファリンがあってるよ、今日もINRは2.0でバッチリだった!」  えへ5 
INRは血液凝固の程度を表す検査値で、ワーファリンを服用していない状態を1.0
として、数値が高くなるにつれて凝固し難くなり、逆にその分出血性の副作用も増えます

「INRが高くなり過ぎると、今度は血が止まらなくなって、それはそれで恐いからな」  汗  
頭蓋内出血を起こしたら命に関わりますからね~心原性脳塞栓症予防と出血リスク防止の
両方の観点から、INRは1.5~2.5の範囲に保つのが最良と言われています

「それに加えて、ステントを入れたから、血小板を抑える薬も、2つのんでるしね」  かおまる  
半年前に狭心症を起こされて、冠血管ステント留置術を受けられて以来、血小板の作用を
抑えるお薬が、プラビックス、バイアスピリンの二種類追加になりました

「皮肉にも古いタイプのステントだと、血小板を抑える薬は短期間で済むそうだが」  かおまる  
最近主流なのは、再狭窄を防ぐ目的で、ステントの表面に抗癌剤や免疫抑制剤などの
細胞増殖を抑える薬剤をコーティング
した薬剤溶出ステント(DES)です

「癌の薬なんか塗ってあっても大丈夫なのか? 副作用が恐い気がするが・・・」  冷汗1  
DESに塗布された薬剤は全身には影響なく、冠動脈のみで作用しますので心配無いです
従来型ステントはベアメタルステント(BMS)、つまり薬物を塗っていない金属剥き出し
のステント、と呼ばれますが、DESの方が血管を開存させる効果には優れているものの
BMSよりも血栓形成されるリスクが高いので、抗血小板剤服用を継続する必要があります

「しかしこれだけ血液サラサラの薬のんでると、怪我したら血が止まらなくなりそうで恐い冷汗4
血液を固まり難くする薬か血小板を抑える薬か、どっちか片方で済ませる事は出来ないの?」

大勢の患者さんのデータを分析した結果では、心房細動には抗凝固剤が、ステント血栓症には
血小板抑制剤
が有効と有意差が出ていますので、やはり双方とも止められませんね

「医師も、1年は辛抱してのんでよ、と言ったが、1年したらどれか止めていいの?」  かおまる
抗凝固剤は、カテーテルアブレーションで心房細動を根治しない限りは、継続する必要があり
ステント血栓予防の為の血小板抑制剤は半年から1年後に、2剤を1剤に減量する事は可能
ですが、プラビックスかバイアスピリンのどちらか1剤は継続しなくてはなりません

「1年たっても、1種類減るだけか・・・僕が怪我したら一大事と、家族には、やれ  冷汗2
転ぶなとか頭打つなとか包丁は持つなとか、まるで血友病の様に扱われて気が滅入るんだ」

確かに、血小板凝集と血液凝固という止血に重要な過程を悉く止めている訳ですから
血友病ではないのですが、血友病と思って対処する位で丁度良いと思いますよ

「だが、整形外科医までグルになって、痛み止めも出血に良くないと言い出す始末で」  泣き1
それで、鎮痛剤の非ステロイド抗炎症薬(NSAIDS)が休止になったんですね~
NSAIDSは、胃粘膜保護作用のあるプロスタグランジンを抑えると共に、胃酸により
細胞膜を通り易くなって直接粘膜を傷つけますので、消化管出血を起こし易いのです

「確かに痛み止めは胃に良くないから、よく胃薬と一緒に出されるよね」  汗5 
胃酸を抑えるプロトンポンプ阻害剤等の胃薬を併用すると、胃障害を緩和出来ます
が、NSAIDSには、消化管以外でも出血リスクに拍車をかける恐れがあります

「痛み止めをのむと、ワーファリンの効き目が強くなるらしいしね」  かおまる 
ワーファリンは併用薬の影響を受け易いお薬なのですが、風邪で3日程NSAIDSを
のんだだけで、INRが2.5~3.0位にまで跳ね上がることは良くあるそうです
それに、抗血小板薬のバイアスピリンも実はNSAIDSの一種ですからね

「だからかな~医師も、薬を減らすとしたらバイアスピリンだな、と言っていた」  スマイル2  
大勢の患者さんを調べた結果からも、抗凝固剤とプラビックスの組み合わせが
梗塞や血栓予防にも、出血リスクが少ない面でも最良というデータがあるみたいです
又、最近は3剤併用すると流石に出血が恐いので、ステント留置後半年位で早々と
2剤併用に切り替える医師も増えて
きているようですしね~






(参考)①国立循環器病研究センター  循環器病情報サービス
②2013年発表のWOESTに関する記事
③2015年発表のデンマーク・コペンハーゲン大学ゲントフテ病院の
NSAIDと抗凝固薬使用下での重大な出血と血栓塞栓症の絶対リスクの研究

INRは、2.0~2.2の範囲が最も塞栓症が少なく、1.6~1.8だとやや増加
1.4だとかなり危険で塞栓症予防の意味を成さず2.4以上でも減り続ける事はなく
逆に、出血リスクはINRが低いほど当然ながら頻度は少なく、2.2位から急速に増加します 

結論はINRのベストは2.0~2.2だそうですが、実際には日本の多くの病院では
1.6~2.0程度にコントロールしてDAPT(抗血小板2剤併用)をしているそうです 

これを私なりに考えますと、やはり、出血性イベントを起こした場合は医原性疾患となるから
ではないかと思います

●心臓弁膜症で人工弁を入れた場合やリウマチ性僧帽弁膜症患者さんでは
NOACは血栓塞栓症及び出血合併症が増加し、利益が無くリスクのみが増加した為
今でもワーファリンが唯一の抗凝固薬です

●2014年、WOESTの結果を踏まえ心房細動治療の新たなコンセンサスが発表され

3剤併用療法(経口抗凝固薬+アスピリン+クロピドグレル)は
2剤併用療法(経口抗凝固薬+抗血小板薬の単剤療法)よりも出血リスクが有意差を持ち増加 

経口抗凝固療法継続中の心房細動における心ステント留置後の血栓症予防の為には
3剤併用療法の代替として経口抗凝固薬+クロピドグレルの2剤併用療法を考慮してもよい 

抗凝固剤としてNOACを採用するには、まだ今試験中で、エビデンスは限られているものの
血栓イベントを抑制出来なかったばかりか、出血リスクを増加させた、という感じで

又、新規P2Y12阻害薬の抗血小板薬、プラスグレル(エフィエント)に関しては
まだ推奨するだけのエビデンスは無いようです 

つまりは、NOACとワーファリンでは、出血リスクは今のところ有意差がなく
ワーファリンの方が、INRでモニタリングしながら投与出来、経済的でもあり
出血性イベントが起きた場合の解毒剤も用意されているので、一日の長がある
という所でしょうか? 

●DESでも最近は第二世代の物が主流となり、それだとステント留置後の
抗血小板2剤併用療法の早期中止が可能になって来ているそうです

COX‐2阻害薬やアセトアミノフェンでは、抗凝固剤や抗血小板薬と併用しても
出血リスクの増加は見られなかったそうです






GWは介護の旅でした 

最近怪我した時の止血が遅れがちになっていた義父は、INRを測って貰った所4でして
ワーファリンが急遽休止になり、一包化の中からワーファリンだけ抜きまして
思いがけず薬剤師らしい仕事をしてきました 

私事ですが、パソコンを新しくしました 
まだ慣れませんが、バージョンアップするとやはり楽しいですね 

新規PCが有意差を持って従来PCよりも使用感が良いかどうかは
今後のエビデンスに待つ所ですが・・・

何とか写真も取り込めまして、ほっとしているところです



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フロル

Author:フロル
調剤薬局で働く
薬剤師です

興味のあることは
(昔)パッチワーク
   お菓子作り
   ベランダ・ガーデニング
(現在)糖尿病
    手料理
    パン屋さん

 2014年~ 多肉植物
 在宅を細々始めました

自分の勉強の為にブログを書いています

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