ストーカーのような薬

~薬局でありそうな風景について架空の会話形式で説明しています~





「私が今のんでいるお薬は、純粋なうつ病の薬で間違いないんですよね?」  かおまる
達 歓紗(たつかんさ)さんがのんでいらっしゃるサインバルタというお薬は
SNRIと呼ばれる種類のうつ病のお薬ですが、何かご不明な点でもありますか?

「うつ病が重いと統合失調症のお薬をのむ場合もあるので、気になるんです」  かおまる 
統合失調症のお薬がうつ病にも使われるという話は、決して珍しくありませんよ
現に、エビリファイという統合失調症のお薬が今年の6月に、効能追加でうつ病にも
効くと正式に認められました
が、それ迄も適応外で使われていた位ですからね

「そのお薬なら私も、産後うつが中々治らなくて難渋していた一年前、ドパミンを増やして  かおまる 
やる気スイッチを押す薬だからと勧められましたが、統合失調症のお薬と聞いたので」

ドパミンモノアミンと呼ばれる脳内の神経伝達物質の一種で、報酬系神経、つまり
欲求が満たされて快感が得られる時の神経系に働きますので、前向きな気持ちにします

「でもその作用が行き過ぎると、精神病になる恐れもあるんでしょ?」  ブー1
確かに、ドパミン作用も過剰になると陽性症状の幻覚や妄想などを引き起こしますが
エビリファイは、ドパミンが過剰な場合は抑制し、逆に低下している場合は刺激する
という便利な薬剤で、ドパミン・システム・スタビライザーと呼ばれています

「つまり、ドパミンが丁度良い具合に働くように調節するお薬ということですか?」  かおまる  
そうなんです、従来には無かったタイプのお薬で、とても重宝するので高い評価を得て
欧米各国から様々な賞を贈られ、日本でも今年の5月に恩賜発明賞を頂いています

「お薬にも賞なんてあるんですね、私も断らずに素直にのめば良かったかしら」  かおまる
エビリファイは、一般的なうつ病薬をのんでも完治しない難治性の時に上乗せして使う
お薬で、サインバルタで安定している場合には、敢えてのむ必要は無いですよ

「今でこそ安定していますが、産後うつになった時は重症で、それも元々うつ体質  冷汗4
だから、産後はすごく気を付けていたのになっちゃったので、ガッカリしました」

薬歴によると十年前に初めて、デプロメールといううつ病のお薬をのまれていますね

「デプロメールは良く効いたんですが、持病の腰痛が出て整形にかかった時に  うへー  
鎮痛剤とデプロメールの相性が悪かったらしく、フラフラになってしまって」

それは、鎮痛剤と一緒に処方されたテルネリンという筋弛緩薬との相互作用だと思います
デプロメールはテルネリンの代謝酵素を邪魔しますので、一緒にのむとテルネリンの
最高血中濃度が12倍AUC(血中濃度曲線下面積)が33倍にもなると言われており
テルネリンの血圧低下の副作用が強く現れて、収縮期血圧が80位に迄下がるそうです

「腰痛持ちで時々鎮痛剤のお世話になるのは避けられないので、うつ病薬を変えたの」  かおまる 
その次は、デプロメールと同じSSRIに属するパキシルというお薬になりましたね
SSRIとは選択的セロトニン再取り込み阻害薬の略で、脳内のセロトニンを増やします
一方、現在服用中のサインバルタは、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬
略してSNRIと言い、セロトニンとノルアドレナリンの両方を増やします

「うつ病は、脳内のセロトニンが減ってなる病気ですものね」  かおまる   
正確には、うつ病はセロトニンのみならず、ノルアドレナリンやドパミンなどの脳内の
モノアミンという神経伝達物質の作用不足が全て関わっていると言われています

「パキシルに変わって、症状はデプロメールの時より楽になった気がしました」  えへ4  
パキシルはSSRIの中ではセロトニン受容体への結合力が強く、又、ノルアドレナリン
受容体にも若干結合して再取り込みを阻害
するのでSNRI的な働きもあります

「パキシルのおかげで合コンにも行けるようになって、今の主人とも巡り会えました」  スマイル2
恋愛する事でもセロトニンは増えるみたいですね

「でも、パキシルの恐さはお薬をやめる時に実感しました! 冷汗2  もう症状はないし
結婚も控えてるから、パキシルを徐々に減らして行こうとしたら、感電したみたいに
ビリビリしたり、頭を振るとシャンシャン耳鳴りがしたりして、怖くなってしまって」

パキシルは自らの代謝酵素を自身で阻害する為分解され難く、投与量を倍にすると
血中濃度は4倍になるという具合に、服用量に対し血中濃度が二次関数的に増加する
と言われ、その分服用量を少し減らしただけでも血中濃度がガクンと落ちて
離脱症状が強く出てしまうという欠点があり、やめ難いお薬として悪名高いようですね

「運良くパキシル5mgという小さな粒のお薬が発売されたので、何とかそれで階段状に  かおまる
5mgずつ減らして行って、今度はジェイゾロフトというマイルドなお薬に乗り換えたの」

今は、離脱症状や吐き気などの副作用軽減目的でパキシル徐放剤も出ています
ジェイゾロフトでしたら、パキシルの様に強くない代わりに、離脱症状も少ないです

「パキシルって、まるでストーカーみたいで、すんなり別れてくれないんですね」  かおまる
結婚準備が忙しくなると、ジェイゾロフトものみ忘れる程でしたよね

「結婚してからは精神的に安定して、一切うつ病薬をのまずに済んでいたんですけどね」  かおまる  
去年数年振りにうつ病を発症していらした時は、ジェイゾロフトが中々効かず
翌月サインバルタに変わり、その後、サインバルタとレメロンの併用になりましたね

「カリフォルニアロケット燃料という治療法で、持ち上げ効果が高いのだそうです」  かおまる  
ノルアドレナリン・セロトニン作動性抗うつ薬、略してNaSSAと呼ばれるレメロンは
モノアミン再取り込み阻害作用は無いのですが、アドレナリンα2受容体遮断作用により
ノルアドレナリンとセロトニンの活性を高めるので、サインバルタと併用すると
片やモノアミンを増やし、片やその再取り込みを抑え、又両方共間接的ドパミン増加
作用も持ち、三つのアミンを全て活性化して、ロケットの様に持ち上げてくれるのです

「ロケット療法が効いて、その二剤になってから一週間程で随分楽になりました  スマイル  
でも、強い薬はパキシルで懲りていたので、レメロンは二ヶ月でやめたんです」

ロケットが無事打ち上がったところで、レメロンだけ切り離したんですね
レメロンは、効果発現は早いが、段々効かなくなる、つまり腰折れし易いと言われます

「レメロンはよく眠れて良いんですが、体重がすごく増えちゃうのも嫌だったんです」  かおまる  
レメロンによる眠気は強烈ですが、ノンレム睡眠を増やすので睡眠の質も良くなる様です
又、体重増加の方は、サインバルタによる食欲不振で打ち消される事もあります

「産後太りも解消したいので、今はサインバルタだけで丁度いい感じ  えへ5
それに、サインバルタって痛みにも効くみたいで、最近腰痛も起きてないんです」

サインバルタは、痛みを抑える下行性疼痛抑制神経にも作用し、神経痛にも有効です
さらに、若干ドパミンも増やすので、一応三つのモノアミンを全て活性化します

「うつ病の薬ってのみ始めて二週間位たたないと効かないのが、じれったいですね」  汗  
神経伝達機構には、伝達物質が多いと、受容体がそれを感知して伝達物質の量を
減らすというネガティブ・フィードバック作用がありますので、うつ病の薬をのんで
セロトニンが増えても、すぐには効かないのですが、服用し続ける事により
受容体の感受性が低下して、脱感作を起こしフィードバック抑制がはずれるのです

「つまりその、脱感作を起こす迄に二週間かかるのですね」  汗5  
受容体の数も状況に応じて変化するものでして、伝達物質が多い時は受容体が少なくても
信号が伝わるので受容体数は減少し、逆に伝達物質が少ないと受容体数は増加します
うつ病ではセロトニン受容体が増加していますので、うつ病薬をのんでセロトニンが
多い状態を継続する事で、受容体が健康状態に迄減少する事が治療のゴールとなります

「自覚症状が無くなっても、しばらくは服薬を続けるのはそういう理由なんですね」  かおまる  
セロトニンはすぐ増えるけど、受容体が減少するのに数ヶ月かかるそうです







(参考)各メーカーHP、精神科医のブログ、うつ病患者さんのブログ



『エビリファイの大うつ病補助療法』の勉強会に参加しました

うつ病治療に有効な電気痙攣療法(ECT)の作用機序が解明されたとの事でした
それはつまり、ECT治療で、ドパミン放出とD2受容体刺激が促進されたことにより
後シナプスのD2受容体がダウンレギュレーションした為であるという結論でした

この事により、うつ病へのドパミンの関与が証明されたので、エビリファイが
うつ病に効く理由が解明された、という内容でした

『受容体のダウンレギュレーションが治癒』という意味がよく理解出来なかった
ので、今回ちょっと勉強してみました

グラクソのHPには『受容体のダウンレギュレーションが抗うつ効果発現の
メカニズムとの説もあるが、SSRIの投与により受容体の数は変化しない
との報告もあり、真のメカニズムは現在解明されていない』とありました

この辺りはまだ、論争の余地が有るのかも知れません

『モノアミン仮説』がそもそも仮説なので、現在のうつ病治療は仮説に基づいた
空中楼閣のようなものだと言われる専門医もありました




今回は抗うつ薬の立ち位置が少し見えてきた気がします

パロキセチンのシャンビリって有名なんですね、よく効くのがかえってアダとなり

フルボキサミンとセルトラリンは離脱症状は軽いけど、強力ではなく

アロステリック部位にも結合するレクサプロは、新しい薬で情報少なく

せっかくSNRIとして初めて出て来たミルナシプランは、
パロキセチンにノルアドレナリン作用も若干あったので影が薄くなったとの事

デュロキセチンは、ドパミン作用も若干あり、アミンを三つ共増やす

ミルタザピンは、ミアンセリン(テトラミド)類似で、眠気と10キロ増はザラの体重増加
腰折れしやすいのが珠にキズだそうです



勉強会で印象に残った話が二三ありました

『精神科医は、異性の患者さんに惚れられる事、と、患者さんに自殺される事
の二つのエピソードを経験して、初めて一人前になる』と言われているそうです

演者の先生によると、本当に自殺する人が、前もって死をほのめかす事は、まずないそうです

確かに、私の周りの人の体験を聞いても、そんな感じ

知人が自殺する直前に会いに来たのに、その時は何も言わなかった、とか
『悩みがあるなら打ち明けて欲しかった』と悔しがる人は多いです

という事は、『死にたい』と声高に宣言している人は逆に安全かも知れませんね

もう一つは、うつ病は、意外にも詐病とか本人の思い込みも多いそうです
高血圧や糖尿病などと違い、数値的診断が出来ないので、仕方ないのかも
知れませんが、最近うつ病を診断できる検査値が開発されているとも聞きます

もう一つは、プラセボはうつ病に効き過ぎる薬で、これに勝てたら大したもので
うつ病薬にとって、プラセボは『最大の強敵』なのだそうです




レメロンのんで痩せる人もいるそうです
副作用が教科書通りじゃない例として
私も、ウブレチドとプルゼニドが併用されてる処方箋見て、二度見した事あります







ちょっと前に撮ったものですが我が家のベランダ・プランター

 ベランダ1  ベランダ2



先日、ノンちゃんを予防接種に連れて行きました  その日はちょっと疲れた様子でした

 ノン注射  ノン注射2




福助 このブログが面白かったらクリックお願いします  →  人気ブログランキングバナー 



薬剤師ブログタイムズ ブログランキング参加中!

by 薬剤師ブログタイムズ  
スポンサーサイト
プロフィール

フロル

Author:フロル
調剤薬局で働く
薬剤師です

興味のあることは
(昔)パッチワーク
   お菓子作り
   ベランダ・ガーデニング
(現在)糖尿病
    手料理
    パン屋さん

 2014年~ 多肉植物
 在宅を細々始めました

自分の勉強の為にブログを書いています

カテゴリ
エコライフ

powered by ブログパーツファクトリー
最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
FC2カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード